◇パゴダと微笑みの国 その一歩向こう
東南アジアの西に位置する多民族国家ビルマ(ミャンマー)。
この地を訪れる人々は、自然の豊かさと人々の優しさを口々に
褒めたたえます。早朝から托鉢に回るお坊さんに、食物を供えて
手を合わせる信徒の姿は、仏教が人々にとって生活の一部と
なっていることを、あらためて思い起こさせてくれます。ビルマが
「仏塔(パゴダ)とほほえみの国」と言われるゆえんです。
しかし一歩向こうに入ると、年率30%もの激しいインフレに
苦しみ、長期化する軍事政権の下、あらゆる場面で軍の顔色を
うかがわずにはやっていけない、市井の人々の暮らしぶりが
見えてきます。
◇2007年民主化運動の高揚から現在へ
昨年8月から9月にかけてビルマで起きた民主化運動の背景
には、こうした現状への強い批判がありました。数百人の
活動家が始めた小さな行進は、一カ月後には数万人の抗議
行動へと膨れ上がったのです。その中心にいたのが
僧侶たちでした。
ビルマ政府は、こうした切実な訴えには一切耳を貸さず、
警察や軍隊を使って抗議行動を力ずくで押さえ込みました。
首都ラングーン(ヤンゴン)だけでも、長井健司さんほか、
100人を超す僧侶や市民が殺害されたと考えられています。
現在でも、数百人が依然として身柄を拘束されています。また
既に釈放された人や、逮捕を逃れて潜伏している人の多くが
いまだに元の生活に戻ることができていません。この他にも
ビルマ国内には以前から、アウンサンスーチーさんなど
約1100人の政治囚がいます。
軍政は国家予算の約半分を軍事費に充て、民生分野には
ほんの微々たる額が振り向けられているだけです。50万の
軍隊と大量の資金は、政府が根強い不信感を持つ農村部での
軍事作戦に過去数十年にわたって用いられてきました。国の
東部だけで3千以上の村が破壊され、150万人以上の生活が
奪われています。ビルマ軍兵士による性暴力被害者は数千人、
子ども兵士の数は 世界最大と報告されています。
しかしビルマの人々は日々を耐え忍び、下を向いて生きている
わけでは決してありません。そこにはたくましい生活の知恵や
喜怒哀楽があり、子どもや大人の笑顔があるのです。今回の
写真展では、2007年8月〜9月の民主化運動を振り返るとともに、
ビルマの美しい自然や人々の様子を紹介しています。
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